睥睨
2001年10月3日昼は暑いし夜は寒い。ここは似非アフガニスタンか(時事ネタ)。
こんな感じで愚にもつかないことを考えながら大学に行ってみた。
そういや、もう10月である。あと半年で学生生活ももう終わりなのか、なんて感慨に浸っている暇はなく、授業に出た。
中教室といわれる教室にフラりと立ち寄ると久しぶりに珍しい顔を見た。何も考えずに声を掛ける。
「久しぶり。単位まだ足りないの?」
いつも通りの毅然とした目だけがボクのほうをチラリと向いた。彼女は体の向きを変えることなく首を回して、まるで化けて出てきた幽霊を見るような訝しげな表情でボクを睨みつけた、ようにボクは思えた。何か新しい量子力学の法則でも思いついたような顔をして彼女は歯をこぼす。
「久しぶりだね。授業とってるよ、単位はまぁ大丈夫なんだけど週4で大学来てる」
「ふ〜ん。お疲れさんだね」
二言三言、言葉を交わして、ボクは彼女の横に座ってみることにした。彼女には気がつかれないように、時間表を見るフリをして彼女の顔を盗み見る。
女性としても顔は小さいほうだろうしアゴは細いし全体的に精緻な作りの顔だと以前から思っていたが、久しぶりに近くから眺めてみてもその感想は昔のままだった。その顔には不釣合いなほど大きく、しかもそのあまりに尊大な目のほうばかりに注意を奪われがちなのだけれど、改めて「多分、これが美人ってヤツなんだろうなぁ〜」と独り言をつぶやいてみた。
彼女がその高慢な目をこちらに向けながら、以前より長くなった髪を耳の後ろに追いやり不思議そうな顔つきをする。
「そっちこそどうして? 単位足りないの?」
「まぁ、そんなとこ」
「答えになってないじゃん」
「答える義理もないじゃん」
「人に聞いておいて、自分は答えないんだぁ〜」
「まぁ、単位は微妙に足りなかったりする。だから来てる。そうじゃなきゃ、大学なんて来ないし」
「そりゃ、そうだね」
授業が始まり、そして終わった。
次の授業も同じ教室で、彼女もボクと同じ授業をとるようだった。そのまま席に座り、就職のこととか夏休みの話とか、会わなくなってからの話を色々とした。
次の授業の開始を報せるチャイムが鳴ったが、まだ講師は来なくて雑談を続ける。
「あのさぁ、また・・・・・・」
ボクが全然深い考えもなく言ってしまった一言に、彼女は顔の向きを変えず不遜な横目でボクを睨みつけ、その言葉に応じた。
この目はいつも怒っているように見えるから、今も怒ってるように見えてるだけだと自分に言い聞かせている最中に、慌てて講師が教室にやってきて授業が始まった。
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