再々
2003年6月22日どこからか言葉を見つけてきて、ぼくが言った。
「君がこんなによく泣く子だなんて、思わなかった」
「どんなふうに思ってた?」
「派手好きで、いつもお伴を連れてて、気の強そうな生意気な子だと思っていた」
「わたしは戸川くんのこと、クラスのみんなとは口もきかないし、傲慢でいや味な奴だなって思ってたわ」
「当ってるさ」
「戸川くん、どうして友達をつくらないの?」
「喋るのが、たぶん、面倒なんだ」
「どうして?」
「喋っても結局はなにも通じないような気がする」
「懐疑論者みたい」
「そういうことじゃなくて、ただ人間ていうのは、へんに憎しみあったり、へんに愛しあったり、へんに喜んだりへんに悲しんだり、そういうことをしなくても生きていけるような気がする―――うまく説明できないけど」
樋口有介「ぼくと、ぼくらの夏」文藝春秋1988[75-76]
[BGM360]
david sylvian >
how little we need to be happy
「君がこんなによく泣く子だなんて、思わなかった」
「どんなふうに思ってた?」
「派手好きで、いつもお伴を連れてて、気の強そうな生意気な子だと思っていた」
「わたしは戸川くんのこと、クラスのみんなとは口もきかないし、傲慢でいや味な奴だなって思ってたわ」
「当ってるさ」
「戸川くん、どうして友達をつくらないの?」
「喋るのが、たぶん、面倒なんだ」
「どうして?」
「喋っても結局はなにも通じないような気がする」
「懐疑論者みたい」
「そういうことじゃなくて、ただ人間ていうのは、へんに憎しみあったり、へんに愛しあったり、へんに喜んだりへんに悲しんだり、そういうことをしなくても生きていけるような気がする―――うまく説明できないけど」
樋口有介「ぼくと、ぼくらの夏」文藝春秋1988[75-76]
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